さらに，視線計測データを用いることでより高度な言語理解のプロセスを研究対象とすることもできる。例えば，物語などを読んで深く理解しているとき，読み手は背景知識を活性化させて推論を働かせたり，離れた位置にある情報どうしを関連づけて自らの理解の正しさを確認したりしている。こうした読解中の視線のパターンを観察し，より高度な読みのプロセスの検証を試みたのがUshiro et al.（2016）である。英語を学ぶ日本人大学生を対象に，ある種の矛盾を意図的に挿入した英文を読ませてその視線を計測装置によって記録した。